月 物 語 – Description

月 物 語 – Description

黒を基調としたお伽話の風景

■ 附記


中秋の名月である。前回訪れた芭蕉記念館で件の芭蕉が観月会に参加して田楽に舌鼓をうった云々の話を聞き齧り、月を被写体にするのもいいかと考えた。

しかし現代に生きる我々にとって「月の観察」といえば、人工衛星で裏側まで隅なく撮影された写真が公開されているWebサイトにアクセスすることかも知れない。地表から撮った写真にさほど意義は無く、すると我々の”月撮影プロジェクト”は、素材として撮っておいた巨大な月を城かなにかの背景に合成する話に変わってくる。

そこでいつもの対抗手段として、ロケ地を言わずもがなのお伽話『かぐや姫』の舞台・京都に設定、そのイメージを撮るため西へ東へ渡ってきた。

『かぐや姫』といえば現存する日本最古の物語のひとつ。にも関わらず、スペースノイドたる月面人が主人公という所から何かがおかしい。手違いで産み落とされた地上で育ち、時の最高権力者から求婚されかつ、それを拒否して元いた月に帰っていくというエキセントリックな話だ。なぜ「海の王子と結婚していつまでも幸せにくらしました」ではないのか?

だが改めて見渡してみると、この月を巡る物語は今でも様々な作品の原典、インスピレーションの元になっているとわかる。『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』は直接的な引用、月面人の生まれ変わりが地球で活躍する『セーラームーン』もその変奏だ。性別が男になれば『ドラゴンボール』の悟空にすら影響が感じられる。


それは1969年にアポロ11号が月面着陸したこととおそらく関係がある。宇宙服で足をつけたアームストロング船長が「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な一歩である」と言ったとき、月はミステリアスなベールに包まれる浪漫的な存在から、開拓すべき現実的な土地へ変わったのだろう。それはある種、”月”のコモディティ化だ。

そのコモディティ化した”月”の物語をベースに、それぞれの物語の主人公がさまざまな成長をみせ環境に打ち勝っていく。それが高度成長期を経て、大量消費時代に移り変わった日本で共感をもって受け入れられたのではないか?

一方でアポロプロジェクトは周知の通り、人類が月への興味を失くしたのち凍結された挙げ句、真実性が疑われて陰謀論が囁かれることになった。つまりベールは再度閉じられており…今はそのまま撮った写真でも、僕にはなぜか魅力的に感じられるのである。

「月が綺麗ですね」

 

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■ 識別情報


Series 月 物 語
Photographer 九条いつき
Captured Date 2021.10.20-21
Location 京都東山-西山周辺
Titles tsukimonogatari_01-08
Reproduction Limit 2
ID History tsukimonogatari,
Notice  

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