Artist Statement



それは「世界にひとつ」を探す旅 ———

■ 序


はじまりはインターネットだったか?



あるいは町の小さな図書館で借りてきた
冒険譚だったか、潮干狩りで拾いあげたバケツ一杯の宝物たちだったかもしれない。

それは僕たち没個性の未来を囁やく
アニメーションや漫画キャラクターだったし、

いつの間にか無限にダウンロードできるようになったポルノや音楽や映画タイトルだった。

それは長じて、
使い捨てられる高等教育やハンバーガー労働だったし、一極集中の末のテロや災害だった。



それは「複製」だった。



「複製」は、一時の豊かさとその後の悪夢を約束していたのだ。

まるでギリシャの賢人が遺した寓話、金の卵を産むガチョウのようだな。

気付いた時にはすでに、
平準化され、すり潰された労働者だった。

その頃から、
僕は「写真」に興味を持つようになった。

それは現実の「複製」でしかなく、それでもどこかしら意味があるように思えた。

それはただの臆病な敵前逃亡だったか、ありもしない一縷の希望を探す旅だったかもしれない。
しかしそのあてどもない旅こそが、僕を扶けることをしたのだ。



だから今、いや以前にも増して、あらゆる物事を
「複製」していく世界に、

僕はひとり、叛逆することを決めたのだ。



九条いつき

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